議決書を読み込む弁護団 |
2015.8.3
市民の正義が東電・政府が隠蔽した福島原発事故の
真実を明らかにする途を開いた!
海渡 雄一
(福島原発告訴団弁護団)
内容
1 やっとここまで来た... 1
2 電力会社役員の高い注意義務を認めた... 2
3 まれな自然現象も考慮しなければならない。... 3
4 原子炉が浸水すれば致命的であることはわかっていた... 4
5 東電役員被疑者らには具体的な予見可能性があった... 5
6 予見可能性を補強した新証拠の数々... 6
7 第二次告訴事件の検審での解明が待たれる保安院と東電の歪んだ共犯関係... 7
9 被害者... 13
10 検察審査会議決の意義と今後の展望... 13
付録 2015年1月22日の二度目の告訴以降に告訴団から検察審査会に提出された上申書など... 14
1 やっとここまで来た
東京第5検察審査会は2015年7月31日福島原発事故について東京電力の勝俣恒久元会長(75)と武藤栄(65)、武黒一郎(69)の両元副社長に対する業務上過失致死傷容疑に基づいて起訴議決を行った。今後は、裁判所が弁護士会の推薦を受けて検察官役として指定する弁護士によって強制起訴がされる。福島原発事故の原因とその対策を巡る刑事責任の有無について刑事公判における審理を通じて法廷で明らかにされることとなった。
告訴団の武藤類子団長は、会見で「『やっとここまで来た』という思いです。原発事故は終わったという雰囲気がありますが、何も終わっていません。今後、開かれる刑事裁判の中で、事故の真実が明らかにされ、正当な裁きが下されると信じています」とコメントした。
弁護団の河合弘之弁護士は、「これだけ重大な事故が起きて、誰も罪に問われないのはおかしいという市民の正義感が検察の判断を覆した。原発事故の真実が永久に闇に葬られそうになっていたところ、再びドアを開かせた意味は非常に大きい。裁判で当時の状況が明らかになれば、東電役員の責任を問う株主代表訴訟や原発事故の賠償を求めている裁判などにも影響を与えるだろう」とコメントした。
以下、この議決の詳しい内容を説明し、この議決の持つ意義を明らかにし、告訴団の今後の活動の課題を明らかにしたい。
2 電力会社役員の高い注意義務を認めた
今回の議決の一つの焦点は原発を運転する電力会社役員の注意義務をどのようなレベルに設定するかであった。議決は、「推本の長期評価の信頼度がどうであれ,それが科学的知見に基づいて,大規模な津波地震が発生する一定程度の可能性があることを示している以上,それを考慮しなければならないことはもとより当然のことというべきである。東電設計の算出した,福島第一原発の敷地南側のO.P.+15.7メートルという津波の試算結果は,原子力発電に関わる者としては絶対に無視することができないものというべきである。そもそもこの試算結果は,推本の長期評価に基づいており,少なくとも福島第一原発の建屋が設置された10m盤を超えて浸水する巨大な津波が発生する可能性が一定程度あることを示している。そして,東京電力自体が過去に2回の浸水,水没事故を起こしており,土木調査グループの者らが参加していた溢水勉強会を通じて,福島第一原発の10m盤を大きく超える巨大津波が発生すると,浸水事故を発生させ,全電源喪失,炉心損傷,建屋の爆発等を経て,放射性物質の大量排出という事態を招く可能性があることも示している。
したがって,当時の東京電力において,推本の長期評価,東電設計の試算結果を認識する者にとっては,津波地震が発生し,福島第一原発の10m盤を大きく超える巨大な津波が発生することについては具体的な予見可能性があったというべきであり,それが最悪の場合,浸水事故による炉心損傷等を経て,放射性物質の大量排出を招く重大で過酷な事故につながることについても具体的な予見可能性があったというべきである。」
「注意義務に違反したといえるためには,当該結果に対する具体的な予見可能性に基づく予見義務,結果回避可能性に基づく結果回避義務が認められなければならない。」としながら、原発を運営する電力会社役員の注意義務について、次のように高いレベルの注意義務を求めた。
「検察官は,推本の長期評価の信頼度等によれば,当時,福島第一原発の10m盤を大きく超えるような巨大津波が発生すると予見する者はなく,「行為者と同じ立場に置かれた一般通常人」を基準に考えると具体的な予見可能性を認めることができないと考えているようである。
しかしながら,ここでいう「行為者と同じ立場に置かれた一般通常人」とは,本件に関していえば,原子力発電所の安全対策に関わる者一般を指していることになる。すなわち,原子力発電という非常に危険性の高い,極めて特殊な技術に関わる,高度な知識を有する者たち一般を意味していると考えられる。前記のとおり,原子力発電に関わる責任ある地位にある者であれば,一般的には,万がーにも重大で過酷な原発事故を発生させてはならず,本件事故当時においても,重大事故を発生させる可能性のある津波が「万が一」にも,「まれではあるが」発生する場合があるということまで考慮して,備えておかなければならない高度な注意義務を負っていたというべきである。当時の東京電力は,原子力発電所の安全対策よりもコストを優先する判断を行っていた感が否めないが,ここでの原子力発電に関わる責任ある地位にある者のあるべき姿勢としては,コストよりも安全対策を第一とする考え方に基づくべきである。したがって,ここでの「行為者と同じ立場に置かれた一般通常人」というのも,コストよりも安全対策を第一とする,あるべき姿に基づいて判断すべきものであり,当時の東京電力の考え方自体を一般化するべきではない。」とした。検察官の判断には原発を通常の技術と同列に論ずる致命的欠陥があったが、議決はこれを根底から批判している。
「検察官は,本件地震は,推本の長期評価をも上回る想定外のものであり,ここまでの津波について具体的な予見可能性はなかったのではないかと考えているようである。しかしながら,過失を認定するための結果の予見可能性とは,当該予見に基づいて結果回避のための対策を講じる動機付けとなるものであれば足りると考える。ここでは,少なくとも10m盤を大きく超える,当時の状況においては何らかの津波対策を講じる必要のあるような津波の発生についての予見可能性があればよいと考える。」
この議決は、我々が主張してきた高い注意義務を、通説の「具体的危険の予見可能説」を維持しながら、正確な事実認定と、無理のない理論的な根拠をもとに認めたものであり、裁判所にも強い説得力を持つものと確信する。
3 まれな自然現象も考慮しなければならない。
本件の最大の争点は政府の地震調査研究推進本部の長期評価にもとづいて津波対策を講ずるべきであったかどうかであるが、議決は、「推本の長期評価は権威ある国の機関によって公表されたものであり,科学的根拠に基づくものであることは否定できない。」「大規模地震の発生について推本の長期評価は一定程度の可能性を示していることは極めて重く,決して無視することができないと考える。」とした。
原発事故は,放射性物質を大量に排出させ,その周辺地域を広範囲に汚染し、長い期間そこには何人も出入りすることができなくなってしまう。加えて,放射能が人体に及ぼす多大なる悪影響は,人類の種の保存にも危険を及ぼすと事故の重大性を明確にした。
そして、法的にも「このような原発事故の恐ろしさは,我が国でも認識されるところとなっている。伊方原発訴訟最高裁判決(最判平成4年10月29日)では,原子炉設置許可の基準の趣旨について,「原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用する装置であり,その稼働により,内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって,・・・(中略)・・・原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑み,右災害が万がーにも起こらないようにするため」であると判示されている」とした。また、「平成18年9月19日,安全委員会が旧指針を改定して策定された新指針では,津波について,原子力発電所の設計においては,「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても,施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」とまで明記されるようになった。」
「これらに共通して言えるのは,原発事故が深刻な重大事故,過酷事故に発展する危険性があることに鑑み,その設計においては,当初の想定を大きく上回る災害が発生する可能性があることまで考えて,「万が一にも」,「まれではあるが」津波,災害が発生する場合までを考慮して,備えておかなければならないということである。」としたのである。
ここでは、原発事故の甚大性と非可逆性から出発し、行政訴訟における最高裁の判示や、安全審査指針の文言に基づいて、まれな自然現象も考慮しなければならないことを明らかにしている。
4 原子炉が浸水すれば致命的であることはわかっていた
東京電力では,1991年10月30日,福島第一原発において海水の漏えい事故が発生し,タービン建屋の地下1階にある非常用ディーゼル発電機等が水没したという事故を経験し,2007年7月に発生した新潟県中越沖地震では,柏崎刈羽原発1号機の消火用配管の破裂による建屋内への浸水事故を経験していた。海外では,1999年12月のフランスのルブレイエ原子力発電所の浸水事故,2004年12月のスマトラ島沖地震の津波によるマドラス原子力発電所2号機の非常用海水ポンプが水没する事故が発生していた。これらの事象は2015年6月のIAEA総会に提案された、福島原発事故に関する最終レポートにおいて、東電の責任を基礎付ける事実として引用されていたものであり、告訴団がレポートを翻訳して提出していたものが議決に活かされている。
「スマトラ島沖地震の津波によるマドラス原子力発電所の事故や2005年8月に発生した宮城県沖地震を受け,保安院と独立行政法人原子力安全基盤機構は,2006年1月以降,設計上の想定津波水位を超える津波が襲来した場合の原子力発電所の設備・機器等に与える影響等を把握すること等を目的として,内部溢水・外部溢水勉強会(以下「溢水勉強会」という。)を継続的に開催した。東京電力の土木調査グループの担当者らも溢水勉強会に参加した。」
「2006年5月11日に開催された第3回溢水勉強会では,福島第一原発5号機において敷地高を1メートル超える高さ(0.P.+14メートル)の津波が無制限に襲来した場合には,非常用電源設備や各種非常用冷却設備が水没して機能喪失し,全電源喪失に至る危険性があることが明らかとなった。」
このような経過を総括して、議決は、「当時の知見として,推本の長期評価やそれに基づく想定津波水位の試算結果,貞観津波やそれに基づく想定津波水位の試算結果が重要であったといえる。ただし,これらはその信頼度等が必ずしも高いとはいえず,その取扱いについては意見が分かれていたことは否定できない。
もっとも福島第一原発に10メートルの敷地高を超える津波がひとたび襲来した場合には電源喪失による重大事故が発生する可能性があることはその時すでに明らかになっていた。」と述べている。
5 東電役員被疑者らには具体的な予見可能性があった
このような認識のもとで、議決は、勝俣、武藤、武黒の三名について具体的な予見可能性があると判断した。
「東京電力では,2009年6月には耐震バックチェックの最終報告を行い,それを終了させる予定であったところ,2007年11月ころ,土木調査グループにおいて,耐震バックチェックの最終報告における津波評価につき,推本の長期評価の取扱いに関する検討を開始し,関係者の間では,少なくとも2007年12月には,耐震バックチェックにおいて,長期評価を取り込む方針が決定されていた。」
この点は、これまでの政府事故調の報告では、曖昧にされていた部分である。
政府事故調中間報告では、「武藤副本部長及び吉田部長は、前記想定波高につき、試算の前提とされた推本の長期評価が震源の場所や地震の大きさを示さずに、「地震が三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域内のどこでも発生する可能性がある。」としているだけのものである上、津波評価技術で設定されている三陸沖の波源モデルを福島第一原発に最も厳しくなる場所に仮に置いて試算した結果にすぎないものであり、ここで示されるような津波は実際には来ないと考えていた。
さらに、武藤副本部長及び吉田部長は、このように考えていた他の理由として、前記説明がなされた頃、東京電力が2007年7 月の新潟県中越沖地震に見舞われた柏崎刈羽原発の運転再開に向けた対応に追われており、地震動対策への意識は高かったが、津波を始めとする地震随伴事象に対する意識は低かった旨を挙げている。」としている。そして、「武藤副本部長及び吉田部長は、念のために、推本の長期評価が、津波評価技術に基づく福島第一原発及び福島第二原発の安全性評価を覆すものかどうかを判断するため、電力共通研究として土木学会に検討を依頼しようと考えた。ただし、あくまで「念のため」の依頼であって、その検討の結果がかかる安全性評価を覆すものであるとされない限りは考慮に値しないものと考えていたとのことであり、武藤副本部長らと共に説明を受けた新潟県中越沖地震対策センター長(以下「センター長」という。)も、おおむね同様の考えであった。」とされている。
しかし、この間に明らかになっている事実は、このような報告書内容とは全く異なる。
福島第1の耐震バックチェックにおいては、津波対策がもっとも重要な焦点となっており、しかもこれに関する情報に厳重な情報官制が敷かれていたことは次項で明らかにする。そして保安院も、このことを認識しつつ、耐震バックチェックの表の会議では津波の議論はしないと言うことを規範化していたのである。
「また,平成20年2月16日に実施された地震対応打合せでは,被疑者らに,東電設計のO.P.+7.7メートル以上に上昇する可能性があるという試算結果が報告され,それに関する資料も配付されていた。この打合せには,被疑者ら3名が出席していた」
「平成20年3月18日には,東電設計から,推本の長期評価を用いた最大値O.P.+15.7メートルの試算結果が出されたが,その後も被疑者らの出席する地震対応打合せは回を重ねて実施されていることからすれば,被疑者ら3名は,平成20年3月18日以降のいずれかの時点において,推本の長期評価とそれに基づく試算結果について報告を受けていることが強く推認される。」
「特に,被疑者武藤は,平成20年6月には,この報告を受けていることは前記のとおりであり,被疑者武藤はこれを認める供述をしている。」
「被疑者武黒についても,平成20年6月に被疑者武藤が報告を受けていることからすれば,それと近い時期には同様の情報を認識するようになったと考えられるが(被疑者武藤は平成20年8月に被疑者武黒に報告した旨供述している。),被疑者武黒は,平成21年4月か5月にはこの事実について報告を受けた旨供述している。」
とりわけ、長期評価と東電のシミュレーションを知らなかったとしていた勝俣氏についても、地震対応打合せは,被疑者勝俣への説明を行う「御前会議」とも言われていたこと、津波対策は数百億円以上の規模の費用がかかる可能性があり,最高責任者である被疑者勝俣に説明しないことは考えられないこと、2009年6月開催の株主総会の資料には,「巨大津波に関する新知見」が記載されていたこと等を根拠に強制起訴の結論を導いている。
6 予見可能性を補強した新証拠の数々
検察審査会は、第1回の起訴相当の議決においても、東電の役員たちは、対策が必要であることはわかっていて、途中まではその検討や準備もしたのに、改良工事のために原発が長期停止になることをおそれ、時間稼ぎのために土木学会に検討を依頼して、問題の先送りをしたと認定した。
検察審査会の審理中に、このことを裏付ける証拠が、東電役員の民事責任を問う株主代表訴訟を通じて入手された。それは、平成20年9月10日「耐震バックチェック説明会(福島第一)議事メモ」 である。この1枚目議事概要の中に,「津波に対する検討状況(機微情報のため資料は回収,議事メモには記載しない)」とある。福島第一原子力発電所津波評価の概要(地震調査研究推進本部の知見の取扱) が回収された資料である。その2枚目の下段右側に,「今後の予定」として,以下の記載がある。
「○ 推本がどこでもおきるとした領域に設定する波源モデルについて,今後2~3年間かけて電共研で検討することとし,「原子力発電所の津波評価技術」の改訂予定。」「○ 改訂された「原子力発電所の津波評価技術」によりバックチェックを実施。」「○ ただし,地震及び津波に関する学識経験者のこれまでの見解及び推本の知見を完全に否定することが難しいことを考慮すると,現状より大きな津波高を評価せざるを得ないと想定され,津波対策は不可避。」
この「耐震バックチェック説明会(福島第一)」には、東京電力の福島第一の小森所長と本店の氏名不詳の幹部らしか出席していなかった。しかし、会議後に機微情報として回収された最重要情報に示された認識は、会社の最高幹部に直ちに知らされ、共有されたであろう。このことは、勝俣社長以下の幹部が出席した2009年2月の中越沖地震対応打ち合わせの記述からも裏付けられる。それは「平成21年2月11日中越沖地震対応打ち合わせメモ」である。ここに、吉田原子力設備管理部長の発言として,「土木学会評価でかさ上げが必要となるのは,1F5,6のRHRSポンプのみであるが,土木学会評価手法の使い方を良く考えて説明しなければならない。もっと大きな14m程度の津波がくる可能性があるという人もいて,前提条件となる津波をどう考えるかそこから整理する必要がある」そして、武黒本部長が「女川や東海はどうなっているのか」と聞いたのに対して,「女川はもともと高い位置に設置されており,東海は改造を検討中である。浜岡は以前改造しており,当社と東海の問題になっている」と担当者は答えている。また、清水社長の発言として「バックチェックと耐震強化工事を並行でやっているという姿は見せなければならないのではないか」という発言も記録されている。これらは、バックチェックの完了時までに耐震補強を完了できないことがはっきりとしてくる中で,ポーズだけを取って,耐震補強が完了しなくても,最終報告を行い,運転を再開できるように求めるという意味に受け取れる。
また、平成21年2月11日付の「福島サイト耐震安全性評価に関する状況」という資料6頁〈参考〉耐震安全性評価報告書の構成(一般的構成)の表の枠外に,手書きのメモがあり、「地震随伴事象(津波)」の部分について「「問題あり」「出せない」「(注目されている)」と記載されている。
この会議では,福島第一原発,第二原発の耐震バックチェックに関して,津波問題を主に議論がなされていた。このメモによると,当時福島原発に関しては津波について「問題あり」「出せない」「(注目されている)」という状況であったこと、津波対策をとらなければならない状況となっていることを東京電力が会社を挙げて必死に隠蔽しようとしていたことがわかる。
このように、福島第一のバックチェックの最高の難問は、津波対策であった。東電幹部らは、いずれ推本の見解に基づく対策が不可避であることを完全に認識していたのである。しかし、被告らは老朽化し、まもなく寿命を迎える原子炉の対策のために多額の費用の掛かる工事を決断することができなかった。被疑者らは不可避の対策を遅らせることを目的に身内の土木学会へ検討依頼を行ったのである。このことが外部に漏れることを警戒し、所内の会議でも、津波対策に関する書類は会議後に回収するという徹底した情報の隠蔽工作がなされていたのである。東京電力幹部の刑事・民事責任は明白であるといえるだろう。
7 第二次告訴事件の検審での解明が待たれる保安院と東電の歪んだ共犯関係
(1)スマトラ津波直後の保安院の意気込み
福島原発事故に関連して、次に解明しなければならないのは保安院と東電との歪んだ共犯関係の実態である。2006年9月13日に、保安院の青山伸、佐藤均、阿部清治の3人の審議官らが出席して開かれた安全情報検討会(保安院と電事連とJNESの間で開かれていた秘密会)では、津波問題の緊急度及び重要度について「我が国の全プラントで対策状況を確認する。必要ならば対策を立てるように指示する。そうでないと「不作為」を問われる可能性がある。」と報告されている(第54回安全情報検討会資料 131-132頁、傍線は引用者)。
平成18年(2006年)1月の勉強会立ち上げ時点の資料では、保安院は平成18年度に想定外津波による全プラントの影響調査結果をまとめ、それに対するAM対策(過酷事故対策)を平成21年度から平成22年度に実施する予定としていた(同 132頁)。このような決意は、スマトラ島沖の地震による津波のすさまじい被害を目の当たりにした反省から発せられたものであろう。これらの資料によれば、福島第一を含む全原発についてきちんとした津波対策をとる方針であったことがわかる。
(2)保安院への抵抗の拠点 土木学会
それに対して、東電を含む電事連は強く抵抗し、自らの配下にあるといえる土木学会を動員して、このような保安院の方針を骨抜きにした。災害を忘れることから、次の災害が生み出されることがわかる。福島を忘れ、再稼働に突き進めば、次の原発事故を引き起こすことは必至だ。
土木学会「津波評価部会」の実態はその組織構成からも、電力事業者の統制下にあったことが明確となっている。告訴団の第二次告訴の被告訴人である東電の津波対策の責任者である酒井は土木学会の津波評価部会の委員であり、同じく東電の津波対策のサブ責任者である被告訴人である高尾は同部会の幹事であった。
(3)貞観の津波をめぐる保安院内の暗闘1
原子力安全保安院の安全審査課耐震安全審査室で平成21年(2009年)6月30日以降、室長を務めていた小林勝氏は、津波対策について極めて重要な証言を行っている。2008-2009年には、貞観津波規模の地震想定によって、被告訴人らは福島第一原発に9m程度(土木学会手法[1]によれば約12m程度)の津波が襲う危険を予見することが可能だった。2008年10月頃に東京電力は、佐竹健治氏らによる貞観津波の波源モデルに関する論文案(佐竹健二・行谷佑一・山木滋「石巻・仙台平野における869年貞観津波の数値シミュレーション」(以下「佐竹論文」という。)を公表前に入手した。
2008年12月には、東京電力は、宮城・福島県沖で貞観地震規模のマグニチュード8.4の地震が発生したことを想定した津波高さの試算を行った。その結果、福島第一原発の取水口付近O.P.+8.7mから9.2mの津波(土木学会手法によれば、この高さは3割程度高くなるとされており、12メートル程度となる)が襲来するとの試算を得た。これはこれまで論じてきた同年5月の15.7メートルの試算とは別のものである。この情報は、2008年の時点で役員であった被告訴人勝俣恒久、皷紀男、武黒一郎らに周知された。
総合資源エネルギー調査会の原子力安全・保安部会、耐震・構造設計小委員会・地震・津波、地質・地盤合同ワーキンググループの2009年6月24日開催された会議において、委員である岡村行信センター長は、貞観地震による津波の規模が極めて大きかったことや、貞観地震による津波について、産業技術総合研究所や東北大学の調査報告が出ていたにもかかわらず、福島第一原発の新耐震指針のバックチェックの中間報告で、東京電力がこの津波の原因となった貞観地震について全く触れていないのは問題であると指摘した。
そして岡村行信委員が、産総研などの津波堆積物の調査結果を踏まえて、津波審査のやり直しを強く主張していた。この場で東電の立場を説明していたのは、第二次告訴の対象にした東電土木グループの高尾である。
しかし、保安院の名倉審査官は異常なほど冷淡に議論を切り捨てて問題を先送りしようとしている。この部分を2009年7月13日の議事録から引用してみる。
岡村 実際問題として、この貞観の時期の地震動を幾ら研究したって、私は、これ以上精度よく推定する方法はほとんどないと思うんですね。残っているのは津波堆積物ですから、津波の波源域をある程度拘束する情報はもう少し精度が上がるかもしれないですが、どのぐらいの地震動だったかというのは、古文書か何かが出てこないと推定しようがないとは思うんですね。そういう意味では、先延ばしにしても余り進歩はないのかとは思うんですが。
○名倉安全審査官 今回、先ほど東京電力から紹介した資料にもありましたけれども、佐竹ほか(2008)の中で、当然、今後の津波堆積物の評価、それは三陸の方もありましたが、それから、多分、南の方(引用者注:福島のこと)も今後やられる必要があると思いますが、そういったものによって、位置的なものにつきましては大分動く可能性があるということもありますので、そこら辺の関係を議論するためのデータとして、今後得られる部分がいろいろありますので、そういった意味では、今、知見として調査している部分も含めた形でやられた方が信頼性としては上がると私は思っていますので、そういう意味では、その時々に応じた知見ということで、今後、適切な対応がなされることが必要だと思います。その旨、評価書の方に記載させていただきたいと思います。」(同議事録の13頁)
ここで、名倉安全審査官はこの問題は中間報告では取り扱わず、最終報告に記載しますといって、話をうやむやにしている。最終報告は、委員には半年、一年内に出すと行っておきながら、東電の土木学会への検討依頼方針を受け入れたため、最終報告の時期は土木学会の検討後に引き延ばされ、2011年3月11日の時点でも完了していなかった。
(4)貞観の津波をめぐる東電の保安院に対する説明と保安院内の暗闘2
2009年8月上旬には、保安院は東京電力に対し、貞観津波等を踏まえた福島第一原発及び福島第二原発における津波評価、対策の現況について説明を要請した(政府事故調中間報告書 413頁)。
これに対して、8月28日ごろ、東京電力は、15.7メートルの試算の存在は明らかにしないで、2002年の土木学会の津波評価技術に基づいて算出したO.P.+5mから6mまでという波高だけを説明した。あえて、社内の重要な試算結果を規制当局に隠したのである。
森山審議官のメールは、このやりとりの8ヶ月後のものであるが、福島第一原発のバックチェックが容易に進まなかったのは、津波対策による追加工事が必要になることがほぼ確実に予測され、そのことを東電がいやがったためであることがわかって、このやりとりの意味も明確になった。保安院は東電の虜となり、まさに共犯とも言うべき状況で、プルサーマルを進め、津波対策工事による出費で東電の赤字が膨らむのを防ぐために、バックチェックの先延ばし方針をなすすべもなく認めていたのである。
保安院は、貞観津波に関する佐竹論文に基づく波高の試算結果の説明を求めた。これに対して、2009年9月7日ごろ東京電力は、貞観津波に関する佐竹論文に基づいて試算した波高の数値が、福島第一原発でO.P.+約8.6m~約8.9mであることを説明するに至った。
東京電力が保安院に提出する報告等は、その内容について取締役らが認識を共有していたことは、森山メールによって裏付けられる。
最も重要な会議であるこの日の会議に、電力会社に対して厳しい要請をしていた小林勝耐震審査室長は欠席している。しかし、その理由については政府事故調の公開情報の該当部分が墨塗りされていて分からない。
小林氏は当時のことについて「野口(哲男)課長から「保安院と原子力安全委員会の上層部が手を握っているのだから、余計なことはするな。」という趣旨のことを言われたのを覚えている。」(小林第2調書の4頁)「私としては、1F3号機の耐震バックチェックの中間報告について評価作業をするのであれば、貞観地震についても議論しなければならないと考えていた」(同調書の6頁)「実質的に人事を担当する(3字削除)(筆者注:原昭吾、つまり原広報課長のこと)課長(当時)から「余計なことをするとクビになるよ」という趣旨のことを言われた。」(同調書の7頁、傍線およびカッコ内は引用者)と述べており、厳しいことを発言するとクビになることを恐れたため自分から欠席したか、上司から余計なことを言わないように出席を止められた可能性が高い。
いずれにしても、この会合に小林室長が出席して、貞観津波への対応を強く求めていれば、東電は15.7メートルの津波についても、説明せざるを得なくなっていた可能性もあるし、津波対策が大きく進んだ可能性がある。
小林室長を出席させなかった野口課長にも重大な共同過失責任がある。この時期にプルサーマルの推進を強く進めていた野口氏を安全審査課長に据えた人事そのものが、極めて異例である。福島第一原発三号機のプルサーマルの推進のために耐震バックチェックの進行を遅らせ、津波対策を採らせなくするように、組織的圧力が加えられた。その背景には、経済産業省からの動きがあったと考えられるが、その全体像は解明されていない。
(5)東電による保安院の籠絡完成を証明する森山メール
森山善範審議官が、部下に貞観の津波こそが福島第1原発3号機の耐震バックチェックの最大の不確定要素であり、バックチェックを完了するには、津波対策工事が必要であることは東電の役員も認識しているという内容の驚くべきメールを送っていたことが添田氏の著書で判明した。
このメールは、2010年3月24日午後8時6分に保安院の森山善範審議官が、原子力発電安全審査課長らに送ったものである。
「1F3(福島第一原発3号機)の耐震バックチェックでは、貞観の地震による津波評価が最大の不確定要素である」こと、貞観の地震については、福島に対する影響は大きいと思われる。」こと、「福島は、敷地があまり高くなく、もともと津波に対して注意が必要な地点だが、貞観の地震は敷地高を大きく超えるおそれがある。」「津波の問題に議論が発展すると、厳しい結果が予想されるので評価にかなりの時間を要する可能性は高く、また、結果的に対策が必要になる可能性も十二分にある。」「東電は、役員クラスも貞観の地震による津波は認識している。(傍線引用者)」「というわけで、バックチェックの評価をやれと言われても、何が起こるかわかりませんよ、という趣旨のことを伝えておきました」とされている。
このメールは政府事故調の小林勝調書に添付されていたものであるが、森山審議官自身は自らの公開された調書では虚偽を述べている。
「貞観津波の問題を新知見検討会での議論に付そうとしなかったのは、あなたが当時、貞観津波の問題を重要な問題と認識していなかったからではないか。」という問いに対して「なぜだか、自分でもよく分かりません。」というとぼけた答えをしている(同調書の4頁)。この点が1F3の耐震バックチェックの最重点課題であったとメールの中で述べているのであるから、この調書は明らかに偽りを述べていることとなる。
「私は平成21年8月28日頃、及び9月7日頃に、小林勝耐震安全審査室長や名倉審査官が東電から福島地点における津波に関する説明を受けたことに関する報告を受けた記憶はない。」
「もし、私が名倉審査官と同じ安全審査官という立場であり、東電から福島地点における津波の想定波高がO.P.+8mを超えるということを聞いたならば、上司に報告してどう対応すべきか相談していたと思う。」等と述べている(同調書の3頁)。これも、小林氏の前記調書に拠れば、しっかり報告されているので、真っ赤なウソということとなる。
(6)越後屋は悪代官に最後の秘密は言わなかった
さらに、これは平成21年(2009年)8、9月の東電と保安院の津波をめぐるやり取りについての発言であるが、ここで述べられていることは、平成22年(2010年)3月のメール内容とも全く符合しない。森山氏には事故の予見可能性もあったし、回避のための措置を東電に命ずる権限もあった。しかし、責任を否定して虚偽を述べている。その刑事責任は重大であり、福島原発告訴団では第二次告訴の一つの柱として森山氏の責任追及を据えている。
しかし、この15.7メートルの試算結果は2011年3月7日まで保安院には提出されなかった。提出されたのは事故の4日前のことである。このことは、当時の東電と保安院との津波審査全体をバックチェックの中で表に出さず、隠蔽していく共犯関係を前提とすると、異常さが際立つ対応である。
つまり、東電・電事連はとことんまで保安院を籠絡しながら、保安院を最後のところで信用せず、最も重要なデータは見せないという対応をとっていたことになるからである。つまり、越後屋(東電)が悪代官(保安院)をとことん骨抜きにしながら、越後屋は悪代官がいつ裏切るかわからないと考え、最後の重要情報は渡していなかったと言うこととなる。保安院は明らかに共犯者である。しかしどちらが悪質かと問われれば間違いなく東電の方である。
8 福島原発事故は避けることができた
議決は、東電の対策によって事故は避けることができたとしている。
「推本の長期評価やそれを用いた試算結果に基づいた適切な津波対策を検討するための時間が必要であったというものの,適切な津波対策を検討している間に,福島第一原発の10m盤を大きく超える津波地震が発生して,その津波により福島第一原発が浸水してしまう可能性が一定程度あったといえる以上,浸水した場合の被害を避けるために,適切な津波対策を検討している間だけでも福島第一原発の運転を停止することを含めたあらゆる結果回避措置を講じるべきだったのである。」
止めておくという選択は安全性が確認できない場合には当然の対応である。2006年の耐震指針の制定時にバックフィット制度とられていれば、このような対策先送りは認められなかったのである。
また、「浸水を前提とした津波対策(蓄電池や分電盤を移設し,HPCI(高圧注水系)やSR弁にケーブルを接続すること,小型発電機や可搬式コンプレッサ一等を高台におくこと等の措置)についても検討する余地があったことは否定できない。これらの対策は,実際には浸水した場合という非常事態において福島第一原発に関わる関係者の連携により十分な効果があるかという問題点はあるが,災害時における具体的なマニュアルの検討等により効果のある対策を実施できる余地はあったと思われる。この点,本件事故後の処理において明らかとなったことであるが,当時の東京電力には,本件事故のような非常時に対応するマニュアル等が存在しなかった。大きな地震やそれに伴う大きな津波が発生する可能性があることが一定程度あったにもかかわらず,それに目をつぶって無視していたに等しい状況である。いずれにしても,福島第一原発の運転を停止することや浸水した場合の対策を検討しておくべきだったというべきである。」
「結局,東京電力の福島第一原発としては,推本の長期評価,それに基づく試算結果を取り入れて適切な安全対策を検討し,その間だけでも運転を停止することを含めた合理的かつ適切な津波対策が講じられていれば,それ以降,いつ本件地震と同規模の地震,津波が発生しでも,本件事故のような重大事故,過酷事故の発生は十分に回避することができたというべきである。」
この部分の論争は、今後の刑事公判でも焦点となるだろう。止めて対策することを含めた合理的、適切な津波対策が講じられていれば、事故は避けられたという議決は我々の主張の通りである。議決は2008年から防潮堤の建築を開始しても間に合わなかったという検察の説明を前提に論理を組み立てているようであるが、許認可の期間まで含めることは妥当とは思われず、検察官役の指定弁護士の主張の組み立ての方針としても、この点も付け加えることを検討することをお願いしたい。
常識からみて、東電はこれだけ熱心に対策の先送りのための工作を繰り広げながら、実質的には何の対策もとらなかったのである。無策の果てに破局を招いたものが、原発の運転を継続しながら対策は間に合わなかったなどという言い訳を認めてはならないと思う。この点においても、被疑者らの有罪判決を勝ち取ることは可能であると考える。
9 被害者
議決は、爆発したがれきに接触するなどして負傷した東京電力の関係者,自衛官等13名と避難に伴う双葉病院の死亡した患者44名を被害者として認定した。
実際には1000名を超える災害関連死亡の犠牲者や100名を超える甲状腺がんの発症者たちも被害者であろうが、議決では前記の二つの類型に被害者を絞り込んでいる。
10 検察審査会議決の意義と今後の展望
福島原発事故に関してはたくさんの事柄が隠されてきた。この議決の根拠となった東電と国による津波対策の怠慢に関する情報の多くは2011年夏には検察庁と政府事故調の手にあったはずである。しかし、これらの情報は徹底的に隠された。
この隠蔽を打ち破ったのが、今回の検察審査会の強制起訴の議決である。市民の正義が政府と検察による東電の刑事責任の隠蔽を打ち破ったのである。
議決を受けた記者会見で武藤さんが涙ぐんでおられたのが、忘れられない。私も強制起訴を確信しつつ、東電を中心とする原子力ムラや検察からの圧力の前に検審の委員11人のうちの8人の起訴議決への賛同を得ることは、かなりハードルが高いと感じ、不安を感じなかったと言えばウソになるだろう。検察審査会からの電話連絡を受け、待機していたさくら共同法律事務所から、武藤団長、河合弁護士と共に東京地裁に向かった。審査会の扉を開いて、担当事務局の我々を迎える笑顔を見た瞬間、「勝った!」と確信した。そして、告訴団の皆さんの切実な思いに答えることができ、心からホッとしたというのが本音である。本心を言うと、今回の強制起訴は奇跡のように貴重なものと思える。今回の議決は、本当に真剣に願えば、そして正しく求めれば、私たちの願いは叶えられることがあるのだということを示しているように感じられる。海渡雄一ほか著「朝日新聞吉田調書報道は誤報ではない」(2015 彩流社刊)の第四章で津波対策の問題を取り上げ、告訴団が出してきた多くの新証拠を克明に記載した。この原稿には書ききれなかったことも多い。併読をお願いしたい。
今後開かれる公開の法廷において、福島原発事故に関して隠されてきた事実を明らかにする作業が可能となった。まだまだ検察の集めた証拠の山には宝物が隠されているだろう。強制起訴は弁護士会の推薦を受けて、裁判所が任命した検察官役の弁護士が行う。長期の裁判を遂行するための体制を市民が物心両面で支えるネットワークを作り、裁判の過程を時々刻々と市民に知らせていく体制も作りたい。被害者とされた人々の委任を受けて、裁判に参加する途も追求したい。
市民の正義を現実のものとするために、多くの市民の支えが必要だ。これまで以上の支援をお願いしたい。
付録 2015年1月22日の二度目の告訴以降に告訴団から検察審査会に提出された上申書など
<第一次告訴 第五検審>
(サイエンスライターで元国会事故調協力調査員の添田孝史さんが書かれた「意見書」を、4月6日、第5検察審査会に提出しました。)
(4月21日、福島原発告訴団は、「東京電力役員の強制起訴を求める上申書(4)」を東京第五検察審査会に提出しました。上申書では、1999年に国土庁、日本気象協会が作成した「津波浸水予測図」で、高さ8メートルの津波が福島第一原発に来襲すると、10メートルを大きく超えて遡上し、1~4号機が浸水するというシミュレーションについてなど指摘しています。東京地検が不起訴とした理由の一つが、原発建屋のある10メートルラインを超える津波を予見できなかったというものですが、少なくとも2000年にはそれを覆す想定を国土庁が発行しており、東京地検は知ってか知らずか不当な決定を下したことが明らかになりました。)
(6月18日、福島原発告訴団は、東京第五検察審査会に、勝俣恒久元東電会長らを強制起訴するよう求める上申書を提出しました。上申書では、東電株主が経営陣に賠償を求めた「東電株主代表訴訟」にて明らかになった新証拠に基づき、刑事責任を問うべきことを主張しています。同日、東電株主代表訴訟の口頭弁論期日が開かれ、福島からの参加者たちも傍聴してきました。弁護団によると、東電が裁判所の勧告に応じて提出した新たな内部資料には、平成20年9月に福島第一原発で当時の所長などが参加して開かれた会議で、政府の地震調査研究推進本部が福島県沖を含む日本海溝沿いで大地震が起きると想定していたことについて、完全に否定することが難しく、現状より大きな想定の津波対策は不可避と記されていたことが明らかにされました。しかもこの会議、終了後に出席者たちから資料を回収しており、議事内容のメモは一切とってはいけないことになっていて、もちろん議事録もないと、東電は主張しています。よほど表に出したくない話し合いをしていたのではないでしょうか。少しずつ、東電側の責任と過失が明らかにされています。)
NHKの報道
東京新聞の報道
IAEAリポートの事故原因に関する評価の内容
IAEAレポートの意義と結論
(1)IAEAレポートの意義
(2)結論
<第二次告訴、第一検審関係>
[1] 土木学会の原子力土木委員会津波評価部会が2002年に策定した「原子力発電所の津波評価技術」のこと