原発事故、全員が不起訴へ 東電前会長や菅元首相ら(朝日新聞)
福島の告訴団事務局には、早朝から「不起訴は許せない」、「地検に抗議の電話しました」、「がんばってください」と、ひっきりなしに電話がかかってきています。また、「お葉書作戦は続けるのでしょうか」という質問も多くいただきました。
朝日新聞の記事は、あくまで推測であり、地検はまだ判断を出してはいません。…とはいえ、地検内の誰かのリークがニュースソースであるだろうと思われ、判断を出す日のは近いのかもしれません。お葉書作戦を今こそ大拡散してください。どんどん葉書を出してください。「朝日の記事には驚きましたが、よもや不起訴ではないでしょうね」と!
弁護団が、「不起訴報道」に対して、「反論の投稿をしよう」とコメントを作成し、朝日新聞に連絡しましたが、「今回は掲載を見合わせる」という返事が返ってきました。
そこで、「不起訴報道への反論稿」を以下に掲載いたします。みなさま、広く拡散をお願いいたします。
なお、朝日新聞の記事は、「福島原発告訴団の告訴」と、別の方々の告訴(数件)もいっしょにまとめて書かれています。福島原発告訴団は「菅直人元首相」、「枝野幸男元官房長官」、「海江田万里元経済産業相」を告訴していません。
・被告訴人名簿はこちらです。
- 勝俣 恒久 東京電力株式会社 取締役会長
- 皷 紀男 東京電力株式会社 取締役副社長 福島原子力被災者支援対策本部長兼原子力・立地本部副本部長
- 西澤 俊夫 東京電力株式会社 取締役社長
- 相澤 善吾 東京電力株式会社 取締役副社長 原子力・立地本部長
- 小森 明生 東京電力株式会社 常務取締役原子力・立地本部副本部長兼福島第一安定化センター所長
- 清水 正孝 東京電力株式会社 前・取締役社長
- 藤原 万喜夫 東京電力株式会社 常任監査役・監査役会会長
- 武藤 栄 東京電力株式会社 前・取締役副社長原子力・立地本部長
- 武黒 一郎 東京電力株式会社 元・取締役副社長原子力・立地本部長
- 田村 滋美 東京電力株式会社 元・取締役会長倫理担当
- 服部 拓也 東京電力株式会社 元・取締役副社長
- 南 直哉 東京電力株式会社 元・取締役社長・電気事業連合会会長
- 荒木 浩 東京電力株式会社 元・取締役会長・日本経済団体連合会副会長
- 榎本 聰明 東京電力株式会社 元・取締役副社長原子力本部長
- 吉田 昌郎 東京電力株式会社 元・原子力設備管理部長、前・第一原発所長
- 班目 春樹 原子力安全委員会委員長
- 久木田 豊 同委員長代理
- 久住 静代 同委員
- 小山田 修 同委員
- 代谷 誠治 同委員
- 鈴木 篤之 前・同委員会委員長(現・日本原子力研究開発機構理事長)
- 寺坂 信昭 原子力安全・保安院長
- 松永 和夫 元・同院長(現・経済産業省事務次官)
- 広瀬 研吉 元・同院長(現・内閣参与)
- 衣笠 善博 東京工業大学名誉教授(総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員 地震・津波・地質・地盤合同WGサブグループ「グループA」主査、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会地震・津波・地質・地盤合同WG委員)
- 近藤 駿介 原子力委員会委員長
- 板東 久美子 前・文部科学省生涯学習政策局長(現・同省高等教育局長)
- 山中 伸一 前・文部科学省初等中等教育局長(現・文部科学審議官)
- 合田 隆史 前・文部科学省科学技術政策局長(現・同省生涯学習政策局長)
- 布村 幸彦 前・文部科学省スポーツ・青少年局長(現・同省初等中等教育局長)
- 山下 俊一 福島県放射線健康リスク管理アドバイザー(福島県立医科大学副学長、日本甲状腺学会理事長)
- 神谷 研二 福島県放射線健康リスク管理アドバイザー(福島県立医科大学副学長、広島大学原爆放射線医科学研究所長)
- 高村 昇 福島県放射線健康リスク管理アドバイザー(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授)
【不起訴報道への反論稿】
何の津波対策もとらなかった東電免責はあり得ない
河合 弘之(弁護士・福島原発告訴団弁護団代表)
去る8月9日本紙朝刊に、月内にも福島原発事故について、我々が行っていた告訴・告発について不起訴処分がなされる方向で検察庁が調整に入っているという報道がなされた。記事において不起訴理由とされている点を取り上げ、告訴人らの考えを述べ、検察官・検察庁の再考を強く求めたい。
本紙報道によると不起訴の理由は、「事故と災害関連死との因果関係はないとは言い切れない。今回のM9規模の大地震と津波は、専門家の間で予測されていたと言えず、事前に想定できたのはM8.3までだった。巨大津波の発生と対策の必要性を明確に指摘していた専門家も少なかった。東電が2008年に津波高さ15.7メートルと試算していた点についても、専門家の間で賛否が分かれ、東電も『実際には起きないだろう』と受け止め、対策を検討したものの、具体化は見送った。東電の津波対策は十分ではなかったものの、刑事責任を問うことは困難。」とされている。
検察官の立脚する予見可能性の議論には次の疑問がある。15.7メートルの津波は東電内部の検討において確かに試算されていた。この原発の想定津波高はわずか6メートルであった。この地域でマグニチュード8.3程度の地震と高さ10メートル程度の津波が来ることは、地震と津波の専門家なら、だれもが頷く普通の想定であった。
電源喪失を防止するための対策としては、防潮堤の設置だけでなく、外部電源の耐震性強化、非常用ディーゼル発電機とバッテリーの分散と高所設置等、構内電源設備の耐震性,耐津波性の強化など多様な措置がありえた。
浜岡原発においては、老朽化した1,2号機は耐震補強を断念し、2008年には廃炉の決定がなされていた。福島第1原発1-3号機についても、同様の措置は十分あり得た。にもかかわらず、東京電力は一切何の対策もとらなかった。予測されたレベルの地震と津波対策を講じたにもかかわらず、それが不十分であったわけではない。東京電力自身が、原子力改革特別タスクフォースの報告において、結果を回避できた可能性を認めているのだ。
事故以前の東京電力社内のすべての証拠を収集し、どのような検討がなされていたのかを解明するには、強制捜査による関係資料の押収が欠かせない。このことは、捜査機関として当然の責務だ。検察庁は、テレビ会議録画や社内メールなどの任意提出を受けただけで、今日まで強制捜査を実施していない。多くの市民の生命と生活、生業を根こそぎ奪ったこの事故について、強制捜査もしないで捜査を終結するような事態は絶対にあってはならない。検察内部の良心が検察庁を揺り動かし、強制捜査の実施と起訴が実現することを心から願ってやまない。