2018年2月12日月曜日

武藤被告ら 具体的な津波対策を継続議論、第3回公判

風のたよりー佐藤かずよし (2018年 02月 11日) より転載)

 2月8日、福島原発事故の責任を問う、東電3被告の刑事裁判(業務上過失致死傷罪)の第3回公判が開かれました。
 2月8日午前7時30分、厳寒の東京地裁前に到着。傍聴券の抽選のため、傍聴整理券の交付指定場所を確認。傍聴整理券の配布時間は8時20分から9時まで。今回も150人を越す方が並びました。

 8時30分には、東京地裁前のアピール行動がはじまり、東京地裁刑事第4部永淵健一裁判長あての『厳正な判決を求める署名』の第2回提出分1,466筆(合計は4,593筆)の集約を確認して、9時に代表団が提出しました。

 9時、傍聴券の抽選結果をうけて、地裁104号法廷へ。筆記用具以外は持ち込み禁止。今回も一人一人携帯品を全部取り出ささせ、体を金属探知機でチェックした上に、いやがる女性たちを尻目に、過剰警備を思わせる、異例の衛士によるボディタッチのチェック後、ようやく入廷しました。


 裁判官3名と検察官役の指定弁護士5名、被害者参加制度により委託を受けた弁護士3名、被告弁護士8名が着席。今回も、冒頭のテレビ撮影が行われた後に、東電旧経営陣の勝俣、武黒、武藤の3被告が入廷。勝俣被告、武藤被告それぞれ元気そうです。

 10時すぎ、永渕健一裁判長が開廷を宣言。
 新たに、採用済の証拠として、検察官役の指定弁護士から3点、被告弁護士が64点の書証を提出しました。そこで、それぞれが、証拠の要旨説明を行いました。

 まず、検察官役の指定弁護士が3点を説明。
 この中で、東京電力土木グループの社内内部メールで、東京電力武藤被告らが具体的な津波対策を継続して議論してきたことが明らかになりました。2009年(平成21年)7月のメールでは、「武藤常務(当時)以下で、議論を重ね構造物での対策を検討してきております。」が、「周辺集落の津波高が高くなるので、このような対策は社会的受け入れられないとの判断」と記述されていました。

 これは、元東京電力の上津原証人が第2回公判で「平成20年6月10日の打合わせに参加しました。席上、土木調査グループの酒井さん、高尾さんが津波高の話しをして、地震本部の見解で計算した結果をどう扱うか」と証言した、2008年(平成20年)6月10日の武藤被告に15.7mの津波高が報告された会合を含めて、武藤被告ら経営陣と1年以上にわたり、防潮堤を含む具体的津波対策を議論してきたことを示すものです。

 続いて、被告弁護士が64点を説明。
 被告弁護士は、弁護側が作成した資料、内閣府に出向している職員や福島県・茨城県の職員から聴取し東京地検が作成した供述調書、東京地検の検察事務官が作成した捜査報告書、津波地震に関する論文等の複写報告書、弁護士作成の資料複写・資料出力報告書など、64点を担当を交代しながら1時間半を超えて説明しました。

 被告弁護士は、まず、「三陸沖北部から房総沖の海溝よりの領域内のどこでも津波マグニチュード8.2前後の地震津波が発生する可能性がある」と指摘した、2002年(平成14年)の文部科学省地震調査研究推進本部による地震活動の長期評価について、内閣府に出向している職員などの供述調書の「防災対策には使いにくい内容」「長期評価公表の見送りの申入れ」「防災対策に多大な投資をすべきか否か慎重な論議を」「あやふやな情報で信頼性あるのか」などの供述をひいて、長期評価に改めて疑問を呈しました。

 しかし、これらの供述は、「防災対策に多大な投資をすべきか」として、逆に、津波対策を蔑ろにしようとする、内閣府中央防災会議側の文部科学省地震調査研究推進本部に対する圧力を露骨に際立たせる結果となっています。

 また、被告弁護士は、2014年(平成26年)東電作成の津波評価を含む東京地検の検察事務官が作成した捜査報告書などから、東京地検が不起訴処分にした理由を踏襲して、「地震調査研究推進本部の長期評価と東北地方太平洋沖地震の比較」を取りあげ、「東北地方太平洋沖地震の方が長期評価による計算結果よりはるかに大きい」「津波は回避できたか」「23.39mの防潮堤が必要だった」として、津波は予見できず回避できなかったと説明しました。

 午前11時45分、最後に、裁判長が「次回期日2月28日」として閉廷しました。

 ●6月までの公判期日は、以下の通りです。(全て10:00〜17:00)

 2/28(水)
 4/10(火)、4/11(水)、4/17(火)、4/24(火)、4/27(金)、
 5/8(火)、5/9(水)、5/29(火)、5/30(水)、
 6/1(金)、6/12(火)、6/13(水)、6/15(金)

被告人弁護人 写真:NHK
指定弁護士・被害者代理人 写真:NHK