1月20日、被害者参加代理人弁護団は、この判決は一審判決をそのまま無批判に是認し、命と生活を奪われた被害者・遺族のみなさんの納得を到底得られない誤った判決だなどとして、指定弁護士に上告を求める旨の上申書を提出しました。
福島原発告訴団・福島原発刑事訴訟支援団も同日、原発事故を引き起こした責任を取るべき経営陣を正しく裁くことができなければ、必ず次の原発事故を招いてしまうなどとして、指定弁護士に上告を求める上申書を提出しました。
上告を求める上申書
2023年(令和5年)1月20日
指定弁護士 石田 省三郎 先生
指定弁護士 神山 啓史 先生
指定弁護士 山内 久光 先生
指定弁護士 渋村 晴子 先生
指定弁護士 久保内 浩嗣 先生
福島原発告訴団 団長 武藤類子
福島原発刑事訴訟支援団 団長 佐藤和良
指定弁護士の皆様には、強制起訴の決定以来、一審、控訴審を通して多大なるご尽力を頂きましたことを深く感謝申し上げます。
私たちは2011年の福島第一原発事故に被災し、また多くの被災者が様々な被害を受けていることを見聞きし、当然事故を引き起こした者が裁かれるのだろうと思っていました。しかし一向にそのような動きがないことから、翌2012年に福島原発告訴団を立ち上げ、集団告訴に至りました。二度と自分たちと同じ悲劇が繰り返されないように、真実を明らかにし、原発事故の責任を問う事を切に望んで行ったものでした。
2019年の一審の無罪判決に続き、控訴審での再びの無罪判決は、亡くなられた双葉病院の患者さんのご遺族をはじめ、告訴・告発人でもある多くの原発被害者が全く納得できないものでした。現場検証や証人尋問、避難者訴訟最高裁判決や東電株主代表訴訟判決の証拠採用もせず、審理を尽くさず下した判決の不当さに胸がえぐられる思いでした。福島の地方紙でも県民の落胆と怒りの声が数多く掲載されています。2023年1月19日付福島民報「論説」では、「上告審の場で厳しく審理してほしい」「前向きに考えるべきではないか」と指摘しています。
原発事故は終わっていません。今も7つの市町村に帰還困難区域が存在します。福島第一原発の「廃炉」の定義さえ、まだ決まってはいないのです。裁判所は原発事故の被害の実相や双葉病院の避難の過酷さをどこまで理解しているのか、原発の安全性をどこまで重大なものとして捉えているのか、疑問に思える判決でした。また、かつて例のない原発事故の責任を問う裁判を行っているという気概も誇りも感じることができませんでした。折しも政府が原発回帰の方針を打ち出してきた今、原発事故を引き起こした責任を取るべき経営陣を正しく裁くことができなければ、必ず次の原発事故を招いてしまうでしょう。このまま、この控訴審判決を確定してはならないと強く思います。
再び大変なご苦労をお掛けすることになりますが、どうか最高裁への上告をして下さることを、切にお願い申し上げます。私たちも最後まで、できることの全てを行っていきたいと思っています。何卒宜しくお願い申し上げます。
以上